ドン・ジュアン
モリエールの書くドン・ジュアンは、なんというか、私には他人とは思えないキャラクターですね(笑)
人生の快楽の追求者であり、神をも恐れない不信心者。
狡くて、罰当たりで、ルール違反なピカロ。
そういった所は、私もそんなもんです(笑)
よーするに
「楽しきゃ、それでいいじゃねぇか。
俺は知ってるぜ?
神様、あんただって、実は、へそくりを隠してるんだろうよ。」
ってな感じなんでしょう。
ろくなもんじゃございやせん(笑)
ただ、このドン・ジュアンは、商売も上手そうですね。
私は商売は、かなり苦手分野なので、その辺りはドストエフスキーの「悪霊」に出てくるステパンさんとか、ゲーテの「ファウスト」に出てくるファウスト博士並に無能ですわ(笑)
このドン・ジュアンという人物は、もともとスペインの伝説の人物を
スペイン・コメディアの作家ティルソが戯曲化して、それがイタリアに渡って、コンメディア・デッラルテ(即興劇)によって上演され、フランスに渡ったらしいです。
そして、モリエールがそれを自分流に戯曲として書いてみたと・・・。
ドン・ジュアンは、スペイン劇、イタリア劇では、ただのだらしのない快楽追求者だったようですが、モリエールによって、哲学的でもある小悪党に昇華されたみたい。
こうした部分はさすがモリエール。
話も面白かったです。
ただ、オチがやや弱い(笑)
オチのひねくれ度に関しては、ティルソのスペイン劇「不信心故に地獄墜ち」の方が、面白かったですねー。
とは言え、思ったのは、やっぱり悪党、皇帝、天才よりも恐いのは、
偽善者、弱者、凡人ですね。
ドン・ジュアンの召使いスガナレルは、ずーっと主人の脇で、主人の悪行を嘆いたり、主人に改心を勧めたりしているのですが、最後にドン・ジュアンが神の雷に打たれて死んだ後、彼のセリフは「俺の給料!!」。
この辺りはさすがにコメディアの皮肉という所でしょうか。
本当にしたたかなのは、皇帝よりも農民なのですよ。
でも、それを知ってるからこそ、皇帝もドン・ジュアンも孤独に、一人で地獄に向かう道を選ぶんじゃないでしょうか。
ある意味、純粋ゆえに、邪悪であり、本当な意味で堕ちれないゆえに、堕ちる。
誇り高い追放者なんだよ。
だって、この世は誇りなんか持たない弱者の為にできてるからね。
なんだかんだ言って。
ちなみにフランス作品では、オノレ・ド・バルザックの書いたドン・ジュアンも面白いです。お薦め♪
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