スカパンの悪巧み
モリエール作の「スカパンの悪巧み」。
スカパンは、典型的な古典喜劇のピカロであり、トリックスター(道化役)ですね。
彼は、なかなか憎めない、ずる賢い奴なのですよ。
なぜって、彼が、主人すらコケにし、こうやって世渡り上手に生きる背景には、召使いという身分の低さも、おそらく関係しているから。
彼は、理不尽な悪行をする悪党ですが、しかし、生まれつきの貧富の差の激しい世の中自体が、すでに理不尽なわけじゃない?
主人は生まれつき主人。
彼は生まれつき、召使い。
そういった境遇の彼が、要領よく、狡く、時には主人すら騙し、上手い事やって生きていく様は、ある意味、民衆の共感を得たんじゃないかしらん?
自分の境遇を受け入れながらも、自分の境遇のルールには収まらない生き方をしてやるぞ。自分だって、世の中を面白可笑しく生きてやるぞ。というある意味、これは神への挑戦なのですね。
道化というのは、そういう者です。
古典演劇の作品は、
主人と召使いのコントみたいなのが、基本的に多いですね。
ドン・ジュアンと、スガナレル。
オクターヴと、スカパン。
ファウストと、メフィスト=フェレス。
みたいなパターンで。
で、大抵、弱い立場の召使いの方が、的確な事を言ったりするし、
皮肉も上手いし、ずる賢い(ドン・ジュアンは例外)。
昔から、弱いという事は、シビアなの。
必死に現実を生きなきゃいけない分、強さや立場に溺れている奴なんかよりも、現実を見つめているのです。
綺麗事もない。
甘さも無い。
悪く言えば、冷酷。
良く言えば、頭がいい。
だから、毒は昔から戦士のものではなくて、魔女のものだし、
本当の答えも、男のものではなくて、女のものなのですよ。
あははは。
- 作者: モリエール,鈴木力衛
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/12
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